ツールについてのハナシ

今回はディスクライバーが使うツールなど、ハード、ソフトの両面で紹介します。

必携ソフトウェア

まずはソフトから。前回の記事で音声ガイド原稿を書く際に使うソフトを紹介しました。Microsoft社のエクセルです。基本は、音声ガイドを書くときに必要になるソフトはこれだけです。

ただ、原稿執筆には調べものが必須ですので、Google ChromeFirefoxなどのブラウザソフトも必要になります。

あとは納品時に使うメーラー、こちらはMicrosoft Officeを買ったときについているOUTLOOKなどの一般的なものでもいいですし、少し値は張りますがBecky! のような有料ソフトでもよいでしょう。

あると便利なソフト

また、私が個人的に重宝しているのは、探三郎(しんざぶろう)という全文検索ソフト。探したいワードを複数のファイルを串刺しにして一気に検索してくれるという優れものです。

エピソードが多いアニメやドラマなどの場合、ある特定の人物や物事に対して、どのエピソードでどんなワードチョイスをしていたか確認したくなることがあります。ファイルを一つ一つ開いて確認していくのは気が遠くなるような作業ですが、全文検索ソフトを使えばグッと作業効率が上がります。

検索対象ワードを入力して検索ボタンを押せば、検索対象ワードが含まれているファイルがリンク表示され、それをクリックすれば検索ワードが含まれたファイルが開くという仕組みです。

全話を通して表記が揺れていないかを調べることもできます。

次にハードの話。もちろんパソコンは必携度No.1のハードウェアです。

タブレットは使える?

昨今、モバイル機器の普及から、たまにiPadのようなタブレット型PCが使えるか? というご質問をいただきます。

もちろんタブレットでもエクセルと互換のあるアプリが入っていてエクセル書類を開いたり編集したりすることはできます。

しかし、セリフや音情報なども含めて、多い時には1万文字以上ものテキスト入力が必要とされることがありますし、音声ガイド原稿は稿を重ねていくうちに、どんどんシートも増えてきますので、扱いやすさという観点からタブレットはおススメできません。

ノートとデスクトップ

なお、ノートかデスクトップかということについては、これはどちらでもよいでしょう。

ひと昔前は、スペック的にノートはデスクトップに比べて不利と言われていましたが、今ではそんな差もありません。

ライフスタイルに合わせて選べばOKです。

スペックについては、字幕制作と違って特殊なソフトを必要とするわけではありませんので、特にハイスペックな機種が必要ということはありません。映像も最大でも3~4GB程度のものを動かすだけですから、量販店で売っている最低スペックのPCでも問題ありません。

ちなみに私は、23.8インチディスプレイのデスクトップ1台、15インチディスプレイのノート1台を同期させながら使っています。デスクトップはオフィスでの使用、原稿と調べものをするときに開くインターネットブラウザ画面を横に並べておきたいため、少し大きめのものをチョイスしました。ノートについては外出先での調べものや原稿チェックなどに使っています。

プリンターは必要?

結論から言うと、あったほうが望ましいです。

ただ、いまはコンビニのネットワークに文書を登録、好きな時にお店でプリントアウトができるようになりましたので、音声ガイド制作にかかわるのはほぼボランティアで数か月に一度という方であれば、なくてもいいかもしれません。

また、字幕制作の現場では誤字脱字のような致命的な誤りを避けるため、字幕原稿を出力して1文字単位でチェックする必要があるのでプリンターは外せないでしょう。

しかし音声ガイドの場合は、原稿に多少の誤字脱字、誤変換があったとしても(もちろん、ないのが大大原則)、読み手も気づきますのでクオリティに影響を及ぼすことはありません。ただ、どちらにしろ、収録に立ち会うときには自分の原稿を持ってこなくてはなりませんので、安いものでも備えておいたほうが無難ではあります。

辞書や辞典

さて、ここで少し、辞書や辞典の類についても触れておきます。
音声ガイドの原稿制作には、事あるごとに触れていますが高い日本語表現力が求められます。

ですから、辞書や辞典の類を使用する機会が必然的に多くなります、というか、辞書や辞典を使わないで原稿を書くということはないと言っても過言ではありません。

まず基本の国語辞典

これを使ったことがないという方はいないでしょうから説明は省きます。

ただ一つだけ。私は日本語ネイティブですが、いかに間違って覚えている表現が多いかということに、たまに愕然とします。ですから、私はたとえ知っていると思っている言葉でも、辞書を使って念のため用法や意味などを必ず確認します。やはりメディアに出す文章ですから、念には念を入れます。

次に類語辞典

これの使用率は非常に高く、おそらく国語辞典よりも多く使うでしょう。

似た言葉や表現が書いてある辞典で、別の表現を探したいときに使います。たとえば「眉をひそめる」という表現を使った直後に、同じ人物が同じような表情を浮かべた場合。連続して「眉をひそめる」は使いたくないので、類語辞典で調べて「顔をしかめる」という表現を見つけて使う、という感じです。

次は てにをは辞典

こちらは知らない方もいるのではないでしょうか。

日本語のコロケーション、つまり言葉の結びつきを調べる辞典です。「青空」という言葉に続く表現で悩んだときに調べてみると、「”に”浮かぶ」とか「”に”広がる」などのように格助詞別に事例が並んでいるという具合です。

辞書・辞典以外の紙媒体資料など

ほかにも、アニメや映画で使われる衣装や舞台設定などをまとめた設定集や百科事典なども、素材に合わせて購入することがあります。

たとえば中世の騎士をテーマにしたアニメで、甲冑の腕の部分から伸びているモノの名前を調べたい、城の屋上部分のスリットのような部分の名前を調べたいというときに使います。

ほか、アニメの原作コミックや劇画の原作小説を購入するこもあります。こうした場合、クライアントから資料として支給されることもありますので、原作がある素材の場合はそのような資料の支給があるかどうか事前に確認しておくとよいでしょう。

少し番外編になりますが、ディレクターにとってはNHKの 日本語発音アクセント新辞典 は必携です。
音声ガイドを制作する際、最終的には収録というプロセスがあり、声優やナレーターに原稿を読んでもらうのですが、収録スタジオに必ずあるのがコレ。

声優やナレーター以外にアナウンサーなど、言葉を扱うことを仕事にする人が必ず持っている辞典です。名前のとおり単語の発音・アクセントのほかに、ものの数え方なども書いてあります。

ただ、ディスクライバーにとって単語のアクセントをどこに置くかということはあまり関係ありませんので、ディスクライバーが必ず持っておかないとダメというわけではありませんが、単に読み物として読んでみても結構面白いですよ。

余談ですが、こちらは普通の辞書と同じくらいの厚さがあり持ち運びに適しているとはあまり言えず、私はお世話になっているスタジオに置いておいてもらっています。スマホ用のアプリが出ていて、こちらは読み上げもしてくれるので非常に便利なのですが、紙版が最近改訂されたのに対して、アプリ版は古いままバージョンアップされていないので、結局、紙版を使うことが多いです。

なお、類語辞典に関してはWeblioの類語辞典・シソーラス・対義語がおススメ。Webにアクセスできればいつでも使えますし、何よりタダですので、わざわざかさばる紙の辞典を買わずとも問題はないでしょう。

そのほかにも、関連語などを調べることができるウェブサイトもありますので、うまくネットを活用すればいいと思います。

また、国語辞典に関してもソフト版を購入してPCに組み込めば、いちいち重い辞典をパラパラめくって目的の言葉を探すという手間も減りますので、適宜、ソフト化していくというのも有効な手です。

まとめです。

  • ソフト…エクセル、ウェブブラウザ(Chrome、Firefoxなど)、メーラー(OUTLOOKなど)、全文検索ソフト
  • ハード…パソコン本体、プリンター
  • 辞書・辞典…国語辞書、てにをは辞典
  • Web辞典…Weblio 類語辞典・シソーラス・対義語
  • ほか、設定資料集、百科事典、原作コミック、原作小説など

※ちなみに、原作コミックなどはブックオフで中古品を買うのがおススメ。

以上です。では。

スタジオカナーレ代表 浅野一郎